希望を宿して
コロナが落ち着きつつあると思ったら、海外ではロシアによるウクライナ侵攻のニュースが耳に入りました。現実とは思えない破壊された市街地の映像に驚愕し、ミャンマー国連大使の言葉が胸に刺さりました。
皆さんは、心がざわざわしたり遣る瀬無い気持ちになっていないでしょうか?
ユング心理学では、私たちは知っていようといまいと、無意識層ですべての人とつながっている、といいます。おそらく多くの人が、今回の状況を見聞きして、知らず心に暗い影を感じているでしょう。それは、人間に対する絶望感かもしれないし、暴力に対する嫌悪感かもしれません。
実は、私たちのほとんどは、今回のニュースで喚起された感情と似た感情を幼い頃に味わっています。大好きだった人達、例えば、両親のケンカを思い出して胸が張り裂けそうになったことや、ヒステリックに怒る誰かを思い出して怖くて震えた過去を持つ人もいるでしょう。規模は比較にならなくても、心の奥では、その時と同じ苦しみや悲しみを追体験します。過去に味わった暗い感情を思い出して、「やっぱり世界は怖いんだ、愛なんてないんだ」と、知らず自分で自分を傷つけてしまうのです。
けれど、私たちは「傷を癒す」と決めれば、傷ついたまま終わらず、傷の奥に守っている本来の希望を思い出し生きることができます。逆説的ですが、自分を苦しめた傷にしがみつかなければ、希望の光は降り注ぐのです。
ただ現状を悲しむだけでなく、平和を望む人々の大勢いる世界に目を向けて、自分の中にある痛みと向き合い、世界に対する愛や信頼を見失うことなく生きていけたら、と思います。